* 時計・ラッキーストライク・朝日 *


参加者......大和 sai



大和


   だれかを好きだと思った事などない。    しかし、体を売った、というもの違う。    横たわる男の背中をながめながら、思いを煙にとかしていく。 こんな時間が人生の中には必ずあって、それはさける事の出来ない事なのだと サチは割り切っているつもりだった。
   その男はいつもラッキーストライクを吸っているのだろう。 その男は他にももっと、ささやかで大切な習慣を身につけているのだろう。
   私は彼の人生を横切ったにすぎない。
   現に昨日バーで知り合ってそのままこのままここに到るわけだから。
   サチは少しまがった小指をさすりながら男の背中をながめた。
   寝顔は見ることが出来なかった。
   少しだけ残念だと思った。

   「彼は、朝日を生きているのかな。夕日を生きてるのかな。」

   サチはある写真家の言った言葉を思い出していた。
   『僕は朝日のような写真をとりたい。そのイメージをふくらますために、 夕日にたたずむ人をとるんだ。』
   どこに向けられる訳でもない笑みをうかべると、サチはベッドをおりた。
   少なくとも、彼は私の朝日じゃない。
   夕日を生きるサチにはすべてを貫く朝が必要だった。
   服を着るとサチは彼に手紙をのこし部屋を出た。

   『おはよう。』



sai


   「ラッキーのメンソール、ありますか?」
   レジカウンターのお兄さんに問う。だが、返事はいつも"No"。 僕は3軒目のコンビニを後にした。次は、公民館の近くのセブン。割と大きな店だから、 置いてあるかもしれない。だけど、僕の期待は直ぐに裏切られた。 5時前だから自販も機能してないし、24h営業のコンビにだけが頼りなのに。
   5軒目、6軒目。本当は僕は判ってる。どのコンビニだって、ラッキーのメンソールなんか 置いてやしない。もう直ぐ5時。僕は腕時計を道路に叩きつけた。まだ5時じゃない。自販なんか知らない。 7軒目にはあるはずだ――――と。
   薄暗い空が仄かに赤みを増す。夜明けだ。
   "ラッキーストライクが見つからなくてさ"言い訳をしたい。
   夜が明けたら、君と朝日を見たら、君は出ていってしまうんだろう?
   "この街を出る前に、お前と夜明けを見てくよ"
   9軒目、10軒目。東の空が、オレンジ色に染まっていく。 僕は、君に会わなくて済んだのかな------別れの言葉を、聞かずに済んだのかな。
   道を別つ友人へ。
薄情者な友人より。








:補足:
これも、saiが大和の家に泊まりに行ったとき突如出した「15分間で3題小説を書こう」という提案から生まれた作品です。




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