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* 氷・色・ふたりのコメディアン *
参加者......大和 sai
大和
自分の中にあった笑顔まで売りはらってしまった。
もうそれはすいぶんと前の事だが。
「もうええわ!」
「何終わらそうとしてんねん!出て来てそうそう引っ込む奴がどこにおんねん!」
俺は知っている。浅野が本当に舞台から一刻も早く立ち去りたいのを。
それでも俺はそれを許すことはできない。
目の前の観客が笑ってる。それは、普通の事。いつからそれは普通の事?
ボケる浅野を台本どおりにツッコむ。台本通りに客は笑う。そして、ほんの一瞬、浅野は苦しそうな視線をよこす。
「なんでやねん!」
俺は、その目つきにツッコんだ。どうして、どうしてそんな顔をするのかと。
しかし、客は笑い、浅野も照れたように笑う。
色が、消えてゆくような気がした。いつから俺達の夢は金になってしまったのだろう。 心の中にはおもしろい事など何一つないのに周りは笑いで満ちている。
「いいかげんにせい!」
「どうも、」
「「ありがとうございました」」
舞台そでに引っこんだ後、浅野の顔をちらっと見た。
同じ氷が、まん中にあった。
なぜだろう。
僕らは、笑うしかなかった。
sai
赤い涙。青い星。カラフルで派手な化粧の男。
彼は道化師だった。
クーラーボックスを脇に、真冬に公園でアイスキャンディーを売る男。
彼もまた、ジョークに満ちた道化師だった。
ふたりのピエロは、公園で顔を見合わせ、笑った。
カラフルなピエロはアイスを、アイス売りのピエロは芸を買った。
来年、また会おうか?そんな約束をして。
:補足:
これは、saiが大和の家に泊まりに行ったとき突如出した「15分間で3題小説を書こう」という提案から生まれた作品です。
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