歌が聴こえる。
不可視の歌。
それは歌であったり、唄であったり、詩であったり、
まるで掴み所の無い、うた。
君は何も望まない。
君に捧げられる祈りが、
いつも君の回りにたゆたっているから。
君の正体はかつて栄盛を極めた光の残骸。
だけど自分には何の価値もないと嘆くこともない。
ただ、空の片隅でそっと、
寄せられる願いに身を委ねている。
"アノコロノキミハドコヘイッタ?"と
君よりも大きく輝く星たちは嘲るかもしれない。
だけど、そんなことよりも、
君は小さな星の地を這う者たちの祈りが気にかかる。
"幸せになれますように"
そんな、歌が、
今も君の元に届き続けている。
何所までも、仄かな光を届け続けている君の名が「屑星」
笑われても、貶されても、
君は何よりも綺麗。
君はやがて流れる星へと姿を変え、空の果てまで堕ちてゆく。
それまではそっと、未だ見ぬ誰かの為に祈りを捧げていよう。
音が聞こえる。
君が空を切って駆ける鋭い音。
運が良ければ辿り着けるだろう。
光の墓場へ。
潔いほどに真っ直ぐ落ちてゆく君は、
辿り着く前に燃え尽きてしまうかもしれない。
切ないほどに100パーセントで駆ける君は、
辿り着く前に空に飲み込まれてしまうかもしれない。
辿り着く場所が、魂の集う聖地なのか、
朽ちた命が寄り添う穢れきった最果てなのか、
判らないまま其処に向かう君に
恐怖という感情は無いのだろうか。
"大丈夫だよ"
君には、記憶があるから。
何者にも変えがたい魂の記憶を抱えているから。
幸せなままの命の記憶を抱いて
何処までも堕ちて行こう。
数多の光の最後の姿が、君の名前「流星」
叶わなかった願いも、届かなかった祈りも、
君が気に病む必要はない。
喜びも、悲しみも、苦しみも、痛みも、全て引き連れて
生まれた場所に還ろう。