Earth, Water, Sun, Wind

from sai




EARTH


夜明け、彼は地平線の彼方に太陽を見つける。


その光に照らされた、無数の命たち。

木々は呼吸を止め、滞空に酸素を放つ。

生物は瞼を開き、微かに、そして段々と躍動し始める。

ゆっくりと真上に向かって上昇する太陽を眺めながら、

彼は束の間の静寂から目覚める。


数多の生を抱き、同値の死をその身に包み込む大きな存在。

その意義も意味も問う事無く、見返りも求めず、ただ享受するだけの存在。


大空を父、碧海を母として生まれた、彼の名は「大地」




WATER


音が聴こえる。

大地のあちこちから奏でられる、夜曲(セレナード)古典舞曲(パヴァーヌ)奇想曲(カプリチオ)

全ての音は彼女から始まる。

そして、大地と大地に根付くもの全てを癒し潤す。


母は海、そして大地を兄に持つ彼女は父を知らない。

また、知る必要もない。

どんなに手を伸ばそうと、触れることのない彼方にあるからだ。


その流れは如何なる悲壮も寂寥も攫う。

それゆえに、彼女の流す涙は誰も知る事無く消えてゆく。


彼女の名は「水」

誰からも何からも愛されるがゆえに誰も何も愛さない、この世でたったひとりの王女。




SUN


彼は笑う。

彼の微笑は命を生む。

彼は歌う。

彼の声は命を育む。


彼は笑う。

彼の嬌笑は大地を灰に変える。

彼は歌う。

彼の奏でる不協和音は風を炎に変える。


全ての生殺与奪の権利をその手に握る、崇拝と畏怖の対象。

誰とも馴れ合うことのない彼を理解することは誰にも出来ない。

彼に焦がれている、大地に縛られた生成色の宝石も、彼にとっては蜜に群がる蟻に等しい。


彼の名は「太陽」

自らを生き急ぐように焼き続け、

派生する熱を生と死へ振り分ける。




WIND


その囁きは水の表面を撫で上げ、土を舞い上げ、光を吸収する。

全てを嘲る様に、全てを許すように、

全てを揶揄うように、全てを慈しむように。


迷い?

惑い?


太陽に熱され、水に冷され、

大地の腕を擦り抜けて。


無数に分散した彼の正体は既に判らない。

ただ、使者としての役割があるだけだ。


自由の名の下に誰の物にもならずに、誰の色にも染まる。

彼の名は「風」

放浪を止めれば消える。

その運命を自由と世界が呼ぶ限り、

彼は耳を澄ませば其処に居る。