ray, shadow and world

from sai




ray


閃きは放たれた。

四方に拡散する粒子たち。

途切れる事無く形あるものを照らし、暗闇を射抜く。

隙間という隙間を埋め、淡くときに激しく輝かす。


善と正の象徴

神の杖より正確に、女神の天秤より無慈悲に暗を容赦なく照らしだす。


生まれる影、

相対する深い悲壮。

その狭間に息づくのは物言わぬ静寂。


彼は知らない。

何も知らなくていいと影は思う。

限りなく続く眩い道の裏に自分が居るなど、瑣末的だ。


彼は見惚れた。

自分の下で全てが晒される命たちに。

そして「光」は哂った。

理由は彼だけが知っている歪んだ開放感に。





shadow


また、誰かが死んだ。

命が尽きるときの僅かな波動に引き寄せられ、

彼は数多の光から見捨てられた生命をその手に

そっと抱く。


魂の分だけ軽くなった亡骸を優しく包む。

鎮魂歌も聖歌も唄ってやることは出来ないけれど、

ゆっくりと永遠の眠りに導いてやることは出来るから。


あたたかな光など、ない。

ただそう思い込ませてやる優しい欺瞞。

幻影。


冷たい身体に一粒の涙を落としてやりながら

彼は思う。

生きる力もない生命に逝き急がせるような

我侭で残酷な正義の存在を。


悲しく、穏やかなシグナルが、

鐘のように「影」に重なった。





world


増え続ける意識に包まれ眠る近代都市

古の記憶と朽ちた鼓動を培う古代遺跡

巡る富と力がもたらす一瞬の儚い幸福

飢えと病に真黒な死へと誘われる動物

気が狂うくらいの愛情と憎悪の渦中で

雨に当たるように無作為に降り掛かる

幸運と不運 慶弔 乾いた鮮花 天地


君は決して平等なんかじゃないんだよ


「世界」へ


この寄生虫の様な最も忌むべき生物が

最も君を愛していることを忘れないで


「世界」へ


有限の生命体の集い得る三次元の空間


美しくて非常に奇怪な僕等に良く似た


君へ





...THE END...