スタートライン



誰にもなれない私がここにいる。
何一つ出来てなくて、もがき苦しんで。そのすえ誰かに誉められたとしてもどこか他人事のような気がしてる。
素直にありがとうって言えずに考え込む。
「今のはどこが良かったの?このパターンは正解なの?」
否定されても同じ事。言い訳がプラスするだけ。
「あなたの気には入らなかったかもしれないけど、間違いじゃないわ。私は間違ってなんかいない。あんまりバカにしないで。」
正解の場所に居たかった。
皆に認めて欲しかった。
いつでも百点満点で居たくて。

でも、いつも空しかった。
心の中には何も無くて、悲しくて、寂しくて。
慰められても素直に信じる事が出来なかった。「分かる分かる、あなたは優しいもの。友達だもんね。」
でも、そんなんじゃ心の中までは癒せない。表面を撫でても癌は消えない。ほんの少しの時間だけ、痛みが麻痺するだけ。
ツカエナイ奴。でも何もないよりマシか。
そして私はまた、携帯に手を伸ばす。
寂しかった。それを認める勇気も無く、克服するだけの根性もなく。 寂しさをまとうのがかっこいい事のように思いながら少し微笑んで歩いた。 何事も無く、穏やかに日々が過ぎていけばいい。そう思いながら。
大好きな母、意地悪だけど優しい姉、バカやれる友達、好きな音楽、好きな人、楽なバイト、インターネット、小説。
周りにあるものに埋まる毎日。
だんだん分からなくなってくる。
私って誰なんだっけ?何が出来るんだっけか?
何も出来ないくせに、自分を特別だと思いたくてことばを吐いた。物語にして読ませた。
けなされる。誉められる。同じ事、同じ事。
ただ、生まれてきたことばたちはどうしようもなく愛しかった。それしかなかった。
今思うよ。人はそれを自己満足という。
ごめんね。きっと君たちは、そんな洋服着たくないのに。私だってそうするつもりはないのに。 それでも書く事を止められなくて、ごめんね。

甘えている。ハッキリと、目の前で言われたとき、何も言い返せなかった。
口でばっかり偉そうなこと言って。夢ばかり見やがって。叱られれば自分の殻に閉じこもって。
泣いたのは怒られたからじゃない。何も言い返せない自分が悔しかったから。 何一つやれてない自分。上ばかり見て羨んでる自分。夢ばかりみてる自分。
どうすればいいのか分からなくて、携帯を探してた。SОSを必死に叫んだ。
「分かんなくて、分かんないよ、どうすればいいの、もう止めちゃおっかな・・・。」
必死でことばを探しながら、だんだん見えてきた。何をするべきなのか。ただ分かってても足がすくんで動けずにいた。 足を踏み出せばもう戻れない。辛い事だらけの毎日を、私はどうやって歩いていくのか。何もやり遂げてないのに。 誰にもなれてないのに。私はどうやって進んでくの。どうやって生き残るの。
ここにいれば辛い事は無い。けどもう、留まれない。時間切れだ。子ども時代はとっくに終わってるんだ。行くしかないんだ。
けど。

ようやくスタート地点に着いたのに、ぐずぐずと動けずにいる。 どうにか抜け道はないかとそればかり探してる。本当は早く歩き出したいのに、震えて一歩が踏み出せない。
そんな私の話を聞いて、君は優しく導いてくれた。本物の景色を教えてくれた。見せてくれた。
電話を切った後、少しだけ泣いたんだ。
いつまでもぐずぐずしてる私の背中を押してくれた事、すごくすごく嬉しくて。 助けてって叫んだら助けてくれた。それが嬉しくて、ありがたくて。
友達だからとかじゃなくて、優しくしてあげたからでもなくて。あなたはただ、助けてって声に答えてくれた。
涙が途切れたとき、悲しさも寂しさも空しさも全部消えてたんだ。
目の前にスタートラインが光って見えた。
そうなんだ。
ここに来るのにだって、沢山の人に手を引いてもらって、背中を押してもらってたんだ。 気づかされた。大切なものはここにあった。暖かく息づいてた。ここからはもう、自分の足で歩いていくしかないんだよね。 怖くないわけ無い。怖くなくなる見込みも無い。
でも、今、このままの私で、足を踏み出すしかないんだ。





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